定期健診で最も重要なのはPMTCじゃない
定期健診で患者にクリーニング(PMTC)することが重要だと思っている、歯科衛生士、歯科医師のみなさん。
お掃除してもらうことが重要だと思っている患者さん。
本当にそうなのでしょうか?
確かに、歯肉縁下(歯ぐきの中)バイオフィルムを除去してもらうことはとても重要です。
が、それよりも重要なことがあるのを知った上で、施術したり、定期健診に行っていますか?
今回みなさんにお伝えするのは「定期健診で最も重要なこと」のポイント5つ
- 1.PMTCとは何か?
- 2.PMTCがメンテナンスで最も重要と考えられた訳
- 3.PMTCよりも重要だとされること
- 4.口腔衛生指導 TBI を効果的に行うためのPMTC
- 5.そんな悠長にTBIしてる時間がない
に分けてをエビデンスを交えながらお伝えします。
知った上でオススメする本当の定期健診、メンテナンスはあなたの臨床を格段にレベルアップしてくれます。
1.PMTCとは何か?
PMTCって歯科医院で使っているコトバこれは「Professional Mechanical Tooth Cleaning」の略語です。
axelsson博士によるこの定義は
「予防歯科看護師、歯科衛生士、歯科医師のような特別な訓練を受けた専門家により、器具とフッ化物ペーストを用いて、全ての歯肉縁上および縁下1~3ミリのプラークを機械的に選択除去する方法」
その上
「PMTCには歯石除去や深い歯肉縁下プラークの除去も含まれるが、歯科医師か歯科衛生士のみが行い、これは一般的にスケーリングと呼ぶ」
との記載もあります。
日本で一般的にPMTCと言えば、ラバーカップで歯面を研磨するポリッシングを指すことが多いのですが、これは多分商業的な意味合いが強いからだと思います。
日本で普及させるために、器具を売りたい、もっと簡単に歯科医院で取り入れることができる形にした為ではないか?と私は推察します。
本当に意味する(学術的に)範囲というのはもっと広く、スケーリングも含まれるというのを覚えておいてください。
2.PMTCがメンテナンスで最も重要と考えられた訳
週ごとに繰り返される専門の歯のクリーニングが予防策であり、小児では口腔衛生状態を大幅に改善し、歯肉炎と虫歯の臨床兆候を効果的に低減することを示した。
この時に歯肉炎の改善は認められたが、虫歯に関しては効果がハッキリしなかったとされています。
プラークスコアで表される個人の口腔衛生は、3か月ごとに専門的な歯のクリーニングを行う患者の治療後のポケットの深さと、アタッチメントレベルの維持にとっては重要ではないことがわった。
という論文もありましたが、この論文では途中で脱落者があったり、抜歯になったケースというのは除外されていることを考えると除外しないといけないのでは?ないかと思います。
このような研究結果から、プロによる処置が患者の口腔内の健康を保つのに、重要な役割を果たすと考えられていたからなのです。
しかし、色々な論文を読んでいると、PMTCだけでは口腔内での健康を維持するのには不十分であるとされています。
3.PMTCよりも重要だとされること
高い水準の口腔衛生を維持することの効果が実証された。サンプルにおける虫歯および歯周病ならびに歯の喪失は非常に少なかった。(簡略)
とされており、この過程では「適切な口腔衛生指導」TBIが含むとされています。
これは1972年に行った、「予防プログラム」を受けたグループと受けてないグループに分けておこなった研究の中の「予防プログラム」を受けたグループ257/357人の30年間の推移をフォローアップした研究です。
この時に歯間部の清掃についても指導があったようです。
その他の論文においても、定期的なPMTCの効果は
機械的な専門家による洗浄以外の要因が歯肉の健康の維持に関与していたことを示しています。プログラムへの参加自体が、患者の口腔在宅ケアを改善する動機となった可能性があることが示唆されています。
Effect of Monthly Professional Mechanical Tooth Cleaning on Periodontal Health in Adults L Glavind
などとあるので、「口腔衛生指導」が必ず必要なのです。
その他にも論文を「professional tooth cleaning」で検索するとたくさん出てくるので興味がある方は調べてみてください。
4.口腔衛生指導 TBI を効果的に行うためのPMTC
メンテナンスの時に必ずPMTCを行いますが、これは患者のモチベーションを上げる役割が大きいです。
もちろん、近年ではポケット内のバイオフィルムを除去することが重要であるとされているので、それは必要なことです。
が、患者が3カ月に一度PCRが0%になっても、その後すぐにプラークは形成されてしまいます。
必ずこの部分を踏まえた上で、メンテナンスでは「TBI」と「PMTC」がセットでおこなわれないと効果は半減どころか、意味がなくなってしまいます。
5.そんな悠長にTBIしてる時間がない
これを解決できるのは「自費のメンテナンス」「自費の初期治療」を導入することです。
または、「初期治療」でしっかり教育をして、メンテナンスにかかる時間を短縮すること。
が、これもまた売上にならない初期治療に、時間を大幅に割かなければいけません。
多くの歯科医院では「保険診療」でメンテナンスを行っているので、きっと30分で検査、TBI、PMTCを行っているのではないでしょうか?
これでは十分なTBIの時間なんて取れないでしょう。
そして、これはもっと言うと…
患者の教育ができない=自費化が遠のくのです。
今一度、「自費の初期治療」「自費のメンテナンス」について考えてみてください。
まとめ
今回は「定期健診で最も重要なのはPMTCじゃない」についてお伝えしました。
- 1.PMTCとは何か?
- 2.PMTCがメンテナンスで最も重要と考えられた訳
- 3.PMTCよりも重要だとされること
- 4.口腔衛生指導 TBI を効果的に行うためのPMTC
- 5.そんな悠長にTBIしてる時間がない
保険が改正されてますます3カ月で「初診」にもどしてきた歯科医院にとっては難しくなってきました。
今一度、「メンテナンス」についてお考えください。