今さら聞けない⁈歯周病の原因 2020年の常識ポイント5つ
全世界で最も蔓延している病気は歯周病である(2001年ギネスブック)
歯科医療関係者は長年歯周病の治療に力を注いでいます。
でも、あなたの知識しっかりアップデートされていますか?
今回は、過去原因だと思われていたこと4つとの比較と今考えられていること
- 1.歯石
- 2.プラークの量
- 3.10種類の歯周病病原性菌
- 4.歯周病への抵抗力
- 5.マイクロビオーム
5つのポイントでお伝えします。
1.歯石
1930年ごろ 原因は歯石だと考えられていました。
これは歯石除去をすると、歯周病患者の歯肉の状態が改善することが多かった為、そのように考えられていたようです。
今でも患者さんは、そのように思っている方は多いです。
これは歯科医療関係者の知識のアップデートがされてないからでは?と思っています。
歯周病の原因はバイオフィルム
歯石自体には強い歯周病菌はいませんが…
- 歯石は表面が粗造な為、バイオフィルムが形成されやすい。
- 歯周組織が根面に再付着するのを邪魔する。
だから、除去する必要があるというのが今の常識です。
2.プラークの量
1960年ごろ 原因はプラークの量だと考えられてきました。
この頃にはまだ「バイオフィルム」というコトバがなかったのです。
当時はまだ、バイオフィルムの中にどんな細菌がいるのかが分かっていませんでした。(質を調べる方法がなかった)
だから、量が歯周病の原因ではないのか?という段階までしか解明できなかったのです。
プラークの量が原因なら、全て落とすのが良い
↓↓↓
100%ブラッシング
の流れとなったのです。
私も学生の頃に言われていたし、当時のセミナーでプラークの量って必死に言われたのを覚えています。
この頃の名残で「徹底的なブラッシング指導」が歯科業界で蔓延しているのではないか?と思います。
バイオフィルムの質が問題
歯周病が重篤化する可能性は18歳~30歳くらいまでに決まっている?
この記事でも書きましたが、バイオフィルムの中の病原性が変化するのは、どの歯周病細菌叢がいるかで決まります。
また、細菌に栄養が与えられる環境かどうかでも、病原性は変わってきます。
磨き残しの量だけで決まる訳ではないのが分かっています。
もちろん適切な指導と適切なブラッシングは必要です。
3.10種類の歯周病病原性菌
1975年ごろ 口腔外での嫌気性菌の培養が可能となりました。
重度歯周病患者からは10種類の嫌気性菌が高頻度で検出されたことから、
ポルフィロモナスジンジバリスクリン(PGI)、トレポネーマ・デンティコラ(TD)、タンネレラのレンギョウ(TF)、Capnocytophagaのochracea(株)、Capnocytophaga sputigena(CS)、プレボテラインターメディア(PI)、プレボテラnigrescens(PN)Campylobacter rectus(Cr)、Aggregatibacter actinomycetemcomitans(Aa)、Eikenella corrodens(Ec)
これらの菌が歯周病に関係しているとされました。
そして、人によりバイオフィルムの中の病原性が違うことも分かったのです。
だから、歯周病原性菌、歯周病関連菌と言われていました。
歯周病の原因菌はレッドコンプレックス
現在はレッドコンプレックスが歯周病の原因菌だと言われています。
P.gingivalis、T.forsytia、T.denticola
参考文献①
この論文では、レッドコンプレックスを頂点とした歯周病の細菌叢が、ピラミットの階層のようにして、口腔内に存在しているということが書かれています。
ながやまデンタルクリニック 歯周病を引き起こす細菌について
覚える数が減りました(笑)
そして、このレッドコンプレックスが存在するかどうかのDNA検査が、一般の歯科でも簡単にできるようになってきました。
ほとんどの患者さんは、浸麻なし、SRPなしの初期治療で歯肉からの出血はなくなることが多いです。(私の場合)
が、初期治療の反応が悪い方は、かなりの確立でレッドコンプレックスが存在し、病原性が高い状態です。
歯科医師と治療計画をしっかりたててください。
この時、保険のルールが邪魔になると思うので、ここは自費の初期治療をすすめるべきだと思います。
4.歯周病への抵抗力
1990年ごろ 歯周病に対する歯周組織の抵抗力には個人差があるとされてきました。
これは、より精密にDNA検査ができるようになり、歯周病原因菌が検出されても、歯周病を発症していない人が多くいることが分かったからです。
バイオフィルムの病原性の変化が影響
病原性の変化はさきほどのプラークの項目でお伝えしたように、環境により変わります。
細菌叢が成長しやすいような環境が整わなければ、歯周病は発症しないのです。
これは歯周病が重篤化する可能性は18歳~30歳くらいまでに決まっている?の記事でも書きましたが、細菌叢の成長も段階があるというのも関係しています。
1990年ごろにはまだ病原性が変化するというのは知られていなかったので、重症化するのは歯周組織の抵抗力の個人差だと考えられてきました。
もちろん、個人による歯周組織の抵抗力も発症と進行には関わっています。
が、これ一択という訳ではないということです。
5.マイクロビオーム
私達人間はマイクロビオームという細菌叢と共生しています。
これは口腔内も一緒で、現在は30歳くらいまでにその細菌のメンバーが固定されると言われています。
いつもはお互いに均衡を保って生活しているのですが、この均衡が破綻すると病気が発症されるとされています。
谷口歯科医院・口腔常在微生物叢解析センター・クリニカルメタゲノミクスセンター
細菌叢・マイクロバイオームとは
これは歯周病も同じで、18歳~歯周病原因菌への感染が始まるのですが、中年期以降で歯周病が発症するのは、なんらかの原因(体力の低下、ストレスなど)でこの均衡が崩れるからだと考えられています。
参考文献②
一つ言っておくと、このマイクロビオームの構成要因を変えようと、乳酸菌関連のサプリが販売されていますが、増えた菌がどのように作用するか、その菌が増えると共生環境がどのように変化するか詳細に分かってないです。(現時点)
精神疾患の改善に効果は見込まれるというのはあるようですが、まだ歯周病や虫歯に関しては、ハッキリわかっていることのほうが少ないようです。
参考文献③④
私はまだ論文に出会ってないので、詳細な論文が出ていたら教えてください。
まとめ
今回は「今さら聞けない⁈歯周病の原因 2020年の常識ポイント5つ」
をお伝えしました。
- 1.歯石
- 2.プラークの量
- 3.10種類の歯周病病原性菌
- 4.歯周病への抵抗力
- 5.マイクロビオーム
未だに100%ブラッシングが大事だと思って、がむしゃらに患者さんにTBIしても根拠がないので聞いてもらえません。
もちろんホームケアは大事ですが…。
それよりも説得力のある説明をしてみてください。
患者さんはテクニック依存のブラッシング指導より、よっぽど歯磨きするようになります。
参考にしてください。
参考文献
①Ecological Considerations in the Treatment of Actinobacillus Actinomycetemcomitans and Porphyromonas Gingivalis Periodontal Infections periodontol 2000 20 341-362 1999
②Distribution of 10 Periodontal Bacteria in Saliva Samples From Japanese Children and Their Mothers Kiyoko Tamura Arch Oral Bio 2006 May;51(5):371-7
④ヒトマイクロバイオーム研究 服部正平
これ、本当に面白いので④は興味があったらぜひ読んでください。